命の晩夏

母がおかしなことを言い出したのは僕が9歳、妹が5歳の春だった。「和貴、あなたのお椀にあるご飯を少しママに頂戴。和貴が口をつけたご飯が欲しいの」僕は驚きながらも母にご飯を差し出した。そして、妹も同じ様に母にご飯をあげたのだった。「美味しい。子供が口をつけたものって自分と同じ味がするのね」そう言って母は微笑んだ。それからしばらくして、母の子宮ガンが見つかった。すでに、肝臓と大腸にも転移しており子宮だけ切り取っても手遅れの状態だった…。

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