山で出逢った二人が織りなす、登山恋記。
夫の遺した“山日記”を辿り登山する、麗しき未亡人……
“大切なもの”を失った女と、“大切なもの”...
愛する人と山に登りたくなること間違いなし!
最近、遅ればせながら登山やキャンプに興味を持ち始めた私ですが、
きっかけは、『岳』/石塚真一 を読んだことがきっかけでした。
山を舞台に、山岳の危険さやリアルさを追求した作品として評価されている『岳』には読むたびに滾らせられます。
そんな私が読む登山マンガ2作目の本作品。
登山を舞台にした恋愛ものかなと思っていましたが良い意味で期待を裏切られました。
亡くなった夫が見た景色を追い求める未亡人と、登山をこよなく愛するクライマーの青年。
初心者と熟練者の構成で描かれているため、登山初心者の方でも勉強のつもりで十分楽しめる内容になっています。中でも登山道具を購入するシーンが印象的です。
ダイナミックなコマの使い方と登場人物の繊細な心情表現、
登山の面白さと難しさを伝えながら自分自身への向き合い方を考えさせる描き方は
デビュー作とは思えない巧妙な作品になっています。
“大切なもの”を失った女と、“大切なもの”に出逢った男のセンチメンタルで雄大な登山恋記。
登山好きな方もそうでない方も、
男性のみならず女性にもオススメな作品です!
完結
81歳、孤独な老人。46歳独身、介護職の女。27歳、特別養護老人ホームを「ある事情」でやめた青年。ぬぐい去れない痛みを抱えた3人の奇妙...
「山田太一と新井英樹が組むなんて…!」
意外過ぎる組み合わせに衝撃を受けて読み始めました。
新井英樹のキャラが感情を爆発させる姿を何度も見てきたので、
序盤は「誰も銃を持たないな…」「誰も人をボコボコにしないな…」と
ついついいつものくせで思ってしまいました。
派手なシーンは多くはありません。
しかし、前職の特養老人ホームで悔やまれる行為を行った主人公の草介と同様に
彼の介護を受ける吉崎さんにも
わかりやすい暴力ではないにせよ人を傷つけた経験があり、
それが彼が抱く痛みと繋がっています。
吉崎さんは、時々家を訪ねてくれるケアマネの女性・重光さんへの感情から
彼女と草介に奇妙な提案をもちかけます…。
最初は普通の元気なおばさんにしか見えなかった重光さんが
展開が進むにしたがってどんどん色っぽく、魅力的に見えてきます。
強烈な暴力もなく性描写も比較的穏やかですが、
心に深く刺さるシーンが多い作品です。
完結
いっつもオレをからかってくる
隣の席の高木さん。
だけど見ていろ、今日こそは必ず
高木さんをからかって
恥ずかしがらせてやる!!
「素直な鈍感男子をからかう可愛い女子」
このシチュエーションをじ~っくり、ゆ~っくり、細か~く、描いたら
こんなに可愛いマンガになるんです!!!
主人公の中学生・西片くんがクラスメートの高木さんに
いいようにからかわれまくるわけですが、
高木さんがからかい上手というより
西片くんが隙だらけなのでは…と若干思わなくもありませんw
でも、高木さんの攻撃に一喜一憂してあたふたする西片くんを見ると
「こりゃからかいたくなっちゃうよな」と高木さんの気持ちが分かってきますし、
からかいの合間にちょいちょいドキッとさせる高木さんを見ると
「うっ…もっとからかってくれ…」と西片くんになり替わって(?)思ってしまいます。
とにかくこのふたり、最高に尊いです!!!
スピンオフ「からかい上手の(元)高木さん」もほのぼの可愛くて
超オススメですので、そちらもぜひ!
完結
話題の百合ラップ・コミック、遂に発売!
青春は孤独だ。でも、わたしには“言葉”があるから。
ネガティブでひっこみ思案、思ったこと...
「“何かになりたい”ためのHIPHOPじゃねえ/隠してる自分の“何か”を晒せ!」
テレビ番組「フリースタイルダンジョン」のヒット以降、
マンガでもラップを題材にした作品がいくつか生まれました。
その中で私が自信をもってお勧めしたいのがこの作品です!
人とうまく喋れない主人公の皐月が、
ラップバトル部(部員2人!)の同級生・レンとアンズと出会い、
自分の殻を破っていくお話なのですが、
ふたりが周囲に理解されない悔しさをバネにして
ケンカもしつつ深く信頼し合いながらラップに打ち込む姿が
めちゃくちゃエモいのです…!
そこに皐月、そしてトランスジェンダーの同級生・ウツギが仲間として加わって、
中二っぽい語彙の皐月、下ネタに強いウツギとそれぞれの個性が
認められていく過程にワクワクしつつ、
女子同士のヒリヒリする恋模様にドキドキもできる、盛りだくさんな一作です!
とある理由でヴァイオリンを弾くのを辞めた
元・天才少年、青野 一(あおのはじめ)。
中学3年の秋、一人の少女と
高校のオーケストラ...
ヴァイオリンをやめた青野一は、ある日出会った。少女と、そしてオーケストラと。
それまで一生懸命に取り組んでいた音楽をやらなくなり、気の抜けた生活をしていた主人公の青野は、担任の先生である武田先生の策略により、ヴァイオリンを練習する秋音律子と出会う。あまり上手くない演奏をしていた秋音は、先生が所属していたオーケストラ部に入るために練習をしていたのだった・・・。
この作品の特筆すべきところ。一つ上げるとすれば、音楽って素晴らしいと思える演奏中の描写。目を瞑れば旋律が聞こえてくるよう。作中の世界に入ってみたいと思ったことも数知れません。
もちろん音楽だけではありません。登場する皆にも注目です。主人公を含め、出てくる皆には悩みがあります。そんな悩みにぶつかりながら解決するところは、自分のことのように喜ばしいです!どんな話が進んでいくのか、どんな曲を演奏していくのか。続きをどんどん読みたくなる。そんな作品です。
不動産業界の闇を曝け出す皮肉喜劇!!
営業に必要なこと以外、客に見せも教えもしないーー
そんな不動産業界に前代未聞の爆弾が、いま...
不動産業界の裏を垣間見る。
口八丁で稼ぎまくる不動産会社のエリート営業・永瀬は突然、嘘がつけなくなってしまう。
上司や顧客に言わなくてもよいことを言わずにはいられずに、営業成績も社内の評価もガタ落ち。それでも不動産の営業を続ける永瀬は、嘘をつけないスタイルで奮闘する。
正直にいくしかない永瀬を通じて、不動産業界の闇を知る!
不動産業界を知る意味でも非常に面白い今作だが、お仕事マンガとしても痛快で面白い!
面倒な取引先や上司と正直な永瀬のやり取りはハラハラしながらも好感が持て、さらには永瀬が教育係として面倒をみる新卒の月下も、新卒らしい真っ直ぐな感じで、こそばゆい感じもありながらも爽やかな気分になれる。
結果、正直に行くしかないという永瀬ではあるが、正直に働くことの良さを面白おかしく感じさせてくれる読後感。
幽霊から始まる少年少女の冒険物語、開幕!
彼女には・・・見える。
幽霊から始まる少年少女の冒険物語、ここに開幕!
「見えないもの...
「あの動画と、その誘いが、どれだけの悪意と死に充ち満ちたものか、想像さえできずに…1人、また1人、無垢が夜に見出されていく。」
web広告でよく目にする作品であったので、試しに読んでみたらドンハマりしました!
厨二心をくすぐるフレーズ、その独特の世界観に引き込まれます!
見えないものが見えてしまう女子中学生・恩田衣子。幽霊が見えてしまう特殊体質が故に、幼いころから友達を作るのが苦手な彼女の前に現れたのは、幽体離脱によって覗きを働いたスケベ同級生の空木と高条。思わぬ出会いが運命の歯車を回す、ホラー青春アドベンチャーです。
「幽霊」を通して3人の絆が深まっていく姿はなんとも微笑ましいですが、そんな「幽霊」の不気味さは生半可ではありません。その異質さは是非本編でお確かめください。
「夜人」と呼ばれる組織の目的、「魔」と形容される異形の存在。テンポのよい展開であると同時に、ページをめくるごとにソワソワが止まらない!
霊感の強い人間と幽霊というありそうな少年マンガ設定ではあるものの、主人公を取り巻く独特な世界観に加え、随所に散りばめられたギャグ要素がエッセンスとなっています!個人的には、「夜人」が組織の認知方法として動画配信を用いたのに対し、旧来用いていたチェーンメールとの効率性の差に時代の流れを感じているシーンがツボでしたw
先が読めない展開に続きが気になる作品です!
完結
話題作『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』の
永田カビが、過去と未来の永田カビに向けて綴る、
親との確執、初めての一人暮らし...
前作『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』をどう超えていくか…!?という点で、作者の永田カビさんにかかる「2作目のジンクス」のプレッシャーは相当なものだったと思います。
しかし、事実は小説より奇なり。
この『一人交換日記』を読む限り、その後の親御さんとの関係も永田さんご自身の精神の安定も、「前進したと思ったのにそんなことなかった」という、淡い期待と深い絶望の繰り返しでした。
読んでいて、あれほどのヒットもこの人を何ひとつ変えていないように見えて、勝手に心配する気持ちがさらに募りました。
『さびしすぎて~』の経験で得た気づきを実際の人間関係に生かしきれないまま、同じ失敗を繰り返してしまう。
「やっぱりな」と「そういうものなのか」という気持ちが半々、という気持ちになりました。
途中、ある人物の登場で少し永田さんに変化が見えそうになりますが、果たしてどうなるのでしょうか…!?
完結
高校入学を機に上京してきた翼くん。
住まいはなんと、表参道のオシャレシェアハウス!
独特かつ致命的なファッションセンスを持つ翼く...
オシャレアレルギーな翼くん(高校一年生)が上京してきたのはオシャレの爆心地表参道。
しかも住むのはオシャレなシェアハウス。住人もオシャレな人間たちばかり。
読モショップ店員、おしゃれカフェの店長、顔が良すぎる美容師…。
どうなる翼くん!?
残念過ぎるファッションセンスの翼くんと、一風変わった住人たちのドタバタコメディです!
息をつく間もなく、わんこそばのごとくギャグが飛び出してきます。家の外で読む人は心して、絶対に笑わないという気合いを入れてから読んでください。
可愛らしい絵柄と、魅力的なキャラクターたちから繰り出される変顔と鋭いギャグの高低差に高山病になりそう…!
元気が欲しい時、何もかもを忘れて笑いたい時に読んでほしい一冊です!!(ただし人目のないところで)
完結
映画化作品『繕い裁つ人』の池辺葵氏、最新作は“住”。
女ひとり、
たったひとつの“家”さがしは、
運命の人を見つけるよりも
難しい!?...
居酒屋の社員の女性、沼ちゃんが一人でマンションを買おうとする話。
かといって、マンション購入を鼓舞するような雰囲気ではない。
居酒屋の社員の女性、沼ちゃんが一人でマンションを買おうとする話。
かといって、マンション購入を鼓舞するような雰囲気ではない。
メインは沼ちゃんのストーリだが、オムニバスのような形式で、
妙齢の一人暮らしをする独身女性のストーリーが挟みこまれる。
住まいに関する話題から切り取る彼女たちの暮らしは様々。
全てが上手くいっているわけでもなく、時に寂しさも描きながらありのままを淡々と映し出す。
独身でも、既婚でも、そこにあるのは等しく暮らしなんだな…としみじみした気持ちに。
マンション購入に関しても同じだ。
たくさんの検討の末、念願のマンションを手に入れた沼ちゃん。
けれど「手に入れてからが勝負だね」と作中のセリフにある通り、マンション購入はゴールではない。
ローンや今後の生活を考えて不安になりながらも、
「わたしのおうちを大切にする」という気持ちを一番優先にしていく沼ちゃんの姿は
健気であり、とても愛しい。
家とは?暮らすとは?そんなことを改めて考えさせられる。
何が良い、何が悪い、というのを決めつけずに
いろんな暮らしがあることを、優しく抱きしめてくれるストーリー。