満州アヘンスクワッド(5)

「そのロシア娘は‥‥二百圓‥‥。いや‥‥買い手によっては三百圓はつけるだろう」
新京で大金を稼いだ勇たちは、さらなる販路拡大を目指し、“東洋のモスクワ”哈爾濱へ! 
そこで出会ったのは「逃がし屋」と呼ばれるロシア人・キリル。青幇とロシアンマフィアの抗争に巻き込まれた勇と麗華は、彼の運転により九死に一生を得ることに。一方、バータルとリンは、満州一のスラム街・大観園に潜入。阿片窟の売人に真阿片を吸わせることに成功し、商売の好機を掴んだ。勇たちの商売は順調に動き始めたかに見えたが、ある日、大観園でキリルの想い人・ナターシャが姿を消してしまう。裏で動いていたのは「闇の人身売買」を取り仕切る哈爾濱の“悪魔”だった。キリルたちは無事にナターシャを救出することができるのか‥‥!?

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スタッフおすすめレビュー

※ネタバレを含む場合がありますのでご注意下さい

時は昭和12年。
舞台は、人の命が軽く扱われるような国「満州」。

関東軍の兵士として母親や妹弟とともに満州にやってきた日方勇は、戦地で助けようとした子供から銃で撃たれて右目を怪我し、前線離脱を余儀なくされます。
その後、農業義勇軍に配属され、虐げられる日々を送りますが、片目を失って以来利くようになった鼻を生かし、食べられる草花を嗅ぎ分けて貧しい生活の支えとしていました。

しかし、母が肺ペストに感染してしまうのです。
母を救うには高額な薬が必要ですが、そんなお金は持っていません。
何とかして稼がなければ…と思った矢先、古い土や堆肥を捨てているはずの処分場からかぐわしく甘美な芳香がすることに気付きます。
扉を開けるとそこには、無能兵と虐げられていた陣内茂が金を稼ぐためにこっそり育てていた阿片芥子が咲き誇っていたのです。

当時の満州は「一番軽いものは人の命」と言われるほどで、生きるためには金が必要でした。
しかし、金を稼ぐには子供を売るか阿片を売るか…といった手段しかありません。
一花咲かせるために必死の茂は、勇に芥子を横取りされまいと襲い掛かりますが、逆に勇 の妹達に殺されてしまいます。
それをキッカケに、勇は母のために阿片製造で金を稼ぐ決意をするのです。

彼は中華民国最大の秘密結社へ自作の阿片を売りつけに行きますが、危うく殺されかけたところを、ボスの娘である麗華に救われます。
彼女は自分が自由になるため、勇と組んで阿片を支配することで、満州国の支配を企んだのです…!!

阿片中毒者などのハードな描写がありますが、画力の上手さと丁寧な物語運びによりグイグイ読み進められます。

製造した阿片の顧客を得るためにかなり強引な手段を取る麗華にハラハラさせられますが、彼女の逞しさに清々しさを感じてしまいます。
一方、そんな麗華の姿に戸惑いを隠せない勇ですが、彼の度胸と賢さは今後大物になる予感がビンビンします!!
個人的希望ですが、家族のために"真阿片"という悪魔の発明をしてしまった勇の苦悩などが描かれてほしいです…。

阿片によって利益を得ている日本軍との対立など、陰謀渦巻く満州で勇がどうのし上がっていくのか…物語はまだまだ始まったばかりです。

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