リウーを待ちながら(3)
横走市を封鎖した後も感染拡大は止まらず、死者の数は1万人を超え尚も増え続ける。疲労困憊する医師たちに出来ることは、「敗北をよりマシな敗北に、絶望をよりマシな絶望に」することくらいだった。そんな中、横走からの脱走を手引きする者が現れ、その脱走者リストが週刊誌にスッパ抜かれるという事態が……それは更なる悲劇へと繋がっていく。暗闇に光は射すのか? 各所で絶賛された、パンデミック物の新マスターピース完結!
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新型コロナウィルスの感染拡大で、改めて注目された本作。
自衛隊演習の爆音で主人公の女性が目を覚ます1ページ目からしばらく彼女の日常が描写され、彼女が横走中央病院に勤める医師であること、その横走中央病院があるS県横走市は富士山麓に位置し、冒頭の演習が行われた自衛隊の駐屯地と病院とは近いことが示されます。そして、駐屯地に所属する隊員と思われる男性が吐血して病院の敷地内で倒れているのを発見されるところから、怒涛のようにストーリーが展開していくのですが、まるで新型コロナウィルスのような感染症が日本でも猛威を振るうことを想定していたかのように、どこかで最近見たような描写が次々と現れ、その合間合間にふとした日常生活の描写が挟まれることでかえってリアルさが増して、正直に言うと気が滅入るところもあるかもしれません。
情報統制、緊急事態宣言、都市封鎖、感染者や感染者が多い地域に対する差別や誹謗中傷などはまるで予言の書のようにも感じられますが、改めて読み直してみると、人間の本質はいつまで経っても変わらないということなのかもしれないと思わされたりもします。
タイトルにある「リウー」は、本作と同様にパン デミックを描いたアルベール・カミュの代表作『ペスト』の中で病と格闘する医師の名です。私たちは果たして、リウーのように、そして主人公のように振る舞うことができるのでしょうか。
本作は全3巻ですので、一気読みもできると思います。未読の方はぜひ読んで、いろいろと考えてみてください。テレビドラマ化もされた同じ作者の作品『インハンド』も、非常におもしろい医療マンガですので、あわせておすすめします。
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