善悪の屑
過去を背負った2人の男が担うのは「復讐の代行」。屑には屑による制裁を!「正義」の意味を問う問題作!
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屑の信念で屑を裁く、新たなダークヒーロー
この作品の魅力は、復讐代行屋の2人・カモとトラのキャラにある。
「法で裁ききれない悪人に制裁を加える」という話は、漫画でもドラマでも多く見る設定だ。しかし、裁く側がサイコパスや快楽殺人者、はたまた人智を超えた存在だった場合、目を覆いたくなる残虐シーンの連続に、ここまで感情移入することはできない。
カモとトラには、代行屋をやるそれぞれの理由がある。依頼人の話に怒り、時には泣くこともある、血の通った人間だ。相手が救いようのない人間とは言え、「目には目を」のやり方で拷問し死に導く彼らを、手放しで褒めることはできない。だが、共感せずにはいられなくなる。
5巻で、カモは悪人に「人間を殺すなんて やろうと思えば誰にでもできる」と言い放つ。ではなぜ、人は人を殺さないのか?その問いに対する彼の持論は、独特だが的を射ており、そこにこの作品の信念が集約されていると言っても過言ではない。彼らもまた「屑」であるが、屑にも通すべき筋や矜持があり、なにより「人の心」があるのだ。
そして、救いのないストーリーの合間の、彼らの鍋パーティーや居酒屋の ひとときにホッとさせられ、人間らしい彼らにどこか親近感を覚えるのだ。
1~5巻が「第1部」で、現在は第2部として『外道の歌』が連載中。金にならないのに代行屋を続けるカモの過去が明かされたり、同業者とのアレコレもあったりしそうな今後に期待。(書店員:おにぎり)
リアルな表情に圧倒される
表向き古書店を営む強面の男と、チンピラ風情の居候。二人が依頼人に代わって復讐をする相手は、法で裁かれることのない非道な罪を犯した屑のような人間たち。
ショッキングな描写やまさしく胸糞な犯罪者たちに意識を持っていかれがちだが、被害者側の葛藤や苦悩がリアルなタッチで丁寧に描かれていることにも注目したい。本作の主人公であるカモは、復讐を代行するにあたり一切の迷いやブレがない。だからこそ、被害者側の表情の変化や心の開放が際立つ。
人が人を裁くというテーマは、読み手に葛藤を生みがちだ。いわゆる私刑に表向きは反対しつつも、理不尽なニュースを目にすれば、会ったこともない犯人に憎しみを抱き、被害者と同じような苦しみを味わえばいいのに、と思ったりする。
だからこそ、一切の迷いなく、自らを「屑」と言い切った上で制裁を下すカモの姿が見たいのだと思う。
第二部である『外道の歌』では、これまで断片的にしか描かれなかったカモの過去が少しずつつまびらかに。こちらにも期待。(書店員:塩もみキュウリ)
淡々と繰り返される復讐代行
対照的な性格のふたりの男性による、淡々と繰り返される復讐代行。
容赦ない復讐行為は正義の執行のようでいて、勧善懲悪でない自覚や自嘲的であったり。
彼らの動機や過去はあまり多くは語られないが、繰り返しからにじみ出るそれらには味わいがあり、一抹の美学なようなもすら感じられる。
過去を背負い開放されるということ、印象的なタイトル「善悪の屑」の意味するものとは、続きが待ち遠しい。(書店員:メイドカフェ同好会員J)
読み始めると止まらない!ダークなサスペンスドラマ
復讐代行屋の男2人が、社会の屑を成敗、成敗~!というと、よくある裏社会系漫画と思われがちですが、これがなかなか面白い!
基本的には一話完結で、実際の事件を参考にしていると思われる話も多い(女子高生コンクリ殺人とか、尼崎事件、スーパーフリーなど)です。
屑たちの所業はあまりに非人道的で、精神的にきついところもあるのですが、それだけに復讐シーンは痛快。
目には目を、歯には歯を、をリアルに実践する2人に、ついつい快哉の声を上げてしまいます。
あとこれ、意外にほっこりする話もあるんですよね。
3巻のお鍋のシーンとか、あれ、なんかこの2人かわいいかも…なんて思ったりして。
残酷描写だけがウリの作品とはひと味違うので、ぜひ読んでみてください。(書店員・水玉)
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