累(9)

他者の顔を奪う口紅。その力と、美しき妹・野菊(のぎく)の協力により、かつて母も挑戦した『マクベス』の舞台に立つ累(かさね)。役に没頭するに従い、己の犯してきた罪を直視することになる累は、野菊の言葉を支えに立ち直る。だがそれは、累に恨みを持つ野菊が、累が最高潮に至るその時に復讐の鉄槌を下すための布石だった。果たして祝福の光はどちらの頭上に輝くのか――。

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メディア化情報

  • 映画化

    「累」

    2018年9月7日公開
    出演:土屋太鳳、芳根京子、横山裕

スタッフおすすめレビュー

※ネタバレを含む場合がありますのでご注意下さい

――クレオパトラの鼻がもう少し低かったら、歴史は変わっていたかもしれない。

こんな名言が誕生するほど、昔から議論の的となっている「美醜」。
この作品は、美しかった大女優の母・淵 透世と違い、醜い容姿で周囲からいじめられている累(かさね)が、母に託された口紅の不思議な力で他者の顔と入れ替わり、望みを叶えていく物語。
口紅という変身アイテムに「テク○ク○ヤコン」的なキラキラ魔法変身少女を期待すると、大きくしっぺ返しを食らうのでご注意を。

累が葛藤するたびに母の幻影が現れ、悪魔のような囁きを続ける。さらに一度覚えてしまった「人に羨望のまなざしを向けられる快感」は、麻薬のように累を虜にし、次の欲望を生み出す。
累の名前は江戸時代に流布した「累ヶ淵」という怪談を彷彿とさせ、物語に登場する人々の執念は底知れぬ淵にも似たものがある。
累の絶望を知ってなお、「人は見た目じゃない、心だ」と言えるだろうか?

作者はまだ新人とのことですが、これが初連載作とは思えないほどの構成力で、特に目力が素晴らしく引きこまれます。表紙の美しい瞳に魅入られたら、ぜひ。

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