カフェでよくかかっているJーPOPのボサノヴァカバーを歌う女の一生
ミュージシャンを目指して活動するも芽が出ないまま35歳になった女が、枕営業の末、インディーレーベルプロデュースのJ-POPのボサノヴァカバーCDのなかの一曲を歌えることになったが……。いい年して夢を捨てきれず、サブカルにまみれて自意識ばかりが肥大した、残念な20代、30代男女の肖像をシニカルな筆致で描く連作短編集。
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※ネタバレを含む場合がありますのでご注意下さい
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痛い……とにかく痛い!表題作の他「ダウンタウン以外の芸人を基本認めていないお笑いマニアの楽園」「空の写真とバンプオブチキンの歌詞ばかりアップするブロガーの恋」など、タイトルだけでも心にグサグサ突き刺さる短編集。
誰でも20代までに一度は何かやらかした過去があるのでは…?例えば、改行だらけの自作の詩をブログにアップしたことは?一字も書いていないのに作家志望を名乗ったことは?セクシャルマイノリティの知り合いを作りたがって夜の街を徘徊したことは?……心当たりは少なくないハズだ。
夢を持つこと、他人と違う自分を追い求めることに憧れても、実現のためには相応の努力とある程度の謙虚さが必要だと思い知らされる。とはいえ、自身を客観的に見つめなおすことができた時、人は成長できるのかもしれないし、けっきょく「フツウ」になってしまうものなのかもしれない。