「オレここに住まわせてもらってる」 秋野がよく銭湯に来るようになり、銭湯で穏やかに過ごす三人。だがクラスメートの有門に銭湯の存在がバレて、遼馬は文化祭の出し物の劇の脚本をすることに。一方、遼馬の行動を不審に思った玲臣は…?
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海辺の町で祖父・勝臣(かつおみ)と共に銭湯「柿の湯」を営む高校生・柿内遼馬(かきうち りょうま)は、静かで穏やかな日々を過ごしていました。
ある日、銭湯に少年・柴崎玲臣(しばさき れお)が遼馬の父に会いたいと訪ねてきます。玲臣は、蒸発した母から聞いた話を頼りに、父と思われる人物を探してこの町にやってきたのです。
しかし二人の父はすでに亡くなっており、玲臣は迷惑をかけまいとその場を後にします。そんな彼の姿に心を動かされた遼馬は放っておくことができず、共に暮らすことに。
銭湯を舞台に正反対な兄弟が繰り広げられる青春群像劇!
物語の中心となる銭湯は、古き良き時代の面影を残し、地域の人々に愛され続けている場所。湯気の立ちのぼる空間には、窓から見える海の景色と、どこか懐かしく温かな空気が流れており、なんだかほっとできます。
遼馬も玲臣、クラスメイトも、それぞれに複雑な家庭の事情を抱えながらも腐ることなく、まっすぐに生きようとする姿が印象的です。彼らは未成熟ながらも現実に向き合い、少しずつ自分の居場所を見つけていきます。その姿に心がじんわり温かくなるのです。
そして、遼馬の 祖父・勝臣の存在がまた素晴らしい。
彼は、厳しさと優しさを併せ持ち、言葉少なくとも深い愛情で孫たちを見守る理想的な大人として描かれています。こんなふうに年を重ねたい、と思わせてくれるような、静かで力強い魅力があります。
今作は「家族」がテーマになっておりますが、「血縁」よりも「関係性」に重きを置いており、玲臣が本当に遼馬の父の子なのかは、物語の核心ではありません。重要なのは、彼らがどう向き合い、どう受け入れ合うかという部分で、「家族とは何か」という問いに対して、作品は「選び取るもの」としての家族像を表現しているのではないでしょうか。
またセリフのひとつひとつが自然で、コマ割りのテンポも絶妙。特に、遼馬と玲臣が銭湯の掃除をするシーンは、言葉がなくとも胸に迫るものがあり、二人の関係の変化を静かに、しかし確かに感じさせてくれます。
人と人との関係性が心地よく、押しつけがましさのない距離感が、読者に安心感を与えてくれる。静かながらも力強い、心に残る物語をご堪能ください。
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