Under the Rose (3) 春の賛歌
19世紀英国、ヴィクトリア女王の時代。ロウランド伯爵家の子供たちの家庭教師に迎えられた牧師の娘・レイチェル。彼女を待ち受けていたのは、貴族の館での苦悩の日々だった。雇い主であるアーサー・ロウランド伯爵の愛人関係、次々に女中と関係する長男からの誘惑…。しかし、そんな試練もすべて神が自らに与えたものと受け止めたレイチェルは館の古い価値観に立ち向かい、しだいに教え子たちの心を開いていく。ただ一人の心を除いては--。
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19世紀英国の伯爵邸が舞台。「冬の物語」は謎の死を遂げた伯爵の愛人の死の真相を、彼女の息子・ライナスが追う話、「春の物語」以降は伯爵邸へ家庭教師としてやってきた牧師の娘、レイチェルを中心として物語は進んでいきます。
厳格なレイチェルは当初、愛人を多数抱えるロウランド伯爵を嫌悪するものの、息子たちへ深い愛情をそそいでいるのを知り、子供たちのため、更なる家庭円満を目指すべく奮闘しますが、実はそれは伯爵邸の歪で美しい世界に光を差し込むがごとき行為であり、何度も傷つけられ、絶望を味わうこととなります。
レイチェルのがんばり具合と報われなさ(報われることもありますが)には読者としても何度も打ちのめされますが、構成や心理描写の巧みさ、抜群の絵の上手さに魅せられ、読む手が止まりません。
※同著者の『Honey Rose』は『Under the Rose』から数年後の伯爵邸が舞台ですので、ぜひ本作を先にお楽しみください。