雨のちマル

どしゃ降りの雨の日、美容師のコタが仕事帰りの公園で拾ったのは
さみしがりやで愛され不足な[まるで大型わんこ]のマル。
酔って人違いをしたまま「捨てないで…」とずぶ濡れで
泣きすがる様子を放っておけず仕方なく家に連れて帰るが、
部屋に着くなり押し倒されてしまう。

ずっと誰かの“二番目”だった孤独なマルは、人違いをしていると気づかないまま
いつものように自らの身体で相手が喜ぶようにただ尽くそうとしていた。
――それが、マルにできる唯一の愛情表現だから。

翌朝、落ち着いたマルに朝ごはんを作ってあげるが、
行くところがなくなってしまったとぼろぼろ涙を流し出す姿を見て
コタもまた自身の抱える寂しさを重ねてしまい、
マルをしばらく家に置くことを決める――。


「どうしても
そばにいたいって思っちゃうんだ」

弱い自分と向き合えず逃げ出した後悔
×
捨てられないよう押し殺し続けてきた感情


居場所を探し求めるふたりが出会い、
どしゃ降りの中で見つけた、“雨上がり”の予感――。

ただ一緒にごはんを食べて、カラダを重ねて、眠って、また起きて。
成り行きではじまった名前のない関係が、愛になるまで。

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